ボーイング929 ジェットフォイル(Boeing 929 Jetfoil)の未来

2022/09/05

ニュースのその後 水中翼船 船舶

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全没翼型水中翼船 ジェットフォイルの代替船問題

日本国内における川崎重工業は、「ライセンス取得当時に想定した需要に近い船会社、航路に販売できた」としており、1995年(平成7年)以降、新造は行われていなかった。その後の航路開設、増便、機材更新は中古艇の融通によってまかなわれている。運用中の初期建造艇は、就航から40年~35年を経過して耐用年数をむかえており、東海汽船は、1981年(昭和56年)就航の「セブンアイランド夢」を代替する際、新造船を希望したが実現せず、JR九州が運航していた1994年(平成6年)就航の「ビートル5」を購入、「セブンアイランド大漁」として、2015年(平成27年)1月に就航させた。しかし2017年(平成29年)になって、東海汽船が25年ぶりに川崎重工に新造船を発注した。

アジアに集まるジェットホイール

過去には、アメリカやヨーロッパでもジェットホイールが運航されいたが、定着はしなかった。世界各国で利用されなくなったジェットホイールが徐々にアジアの日本や香港などに中古船として導入されるようになっていった。これは、価格の面でのメリットもあるが、ジェットホイールのライセンス先の川崎重工が新船を積極的に作る方針を取らない期間が長く続いたことも一因であろう。

過去にジェットホイールの運行されていたところ

ハワイ諸島 ホノルル-マアラエア(モロカイ島)-カイルア・コナ(ハワイ島)
ドーバー海峡 ロンドン-ゼーブルジュ(ベルギー) ロンドン-オーストエンデ(ベルギー) ブライトン(イギリス)-ディエップ(フランス) ドーバー・ラムズゲート(イギリス)-オーストエンデ(ベルギー)
アイリッシュ海 ダブリン(アイルランド)-リバプール(イギリス)
北米 シアトル(アメリカ)ーバンクーバー(カナダ)
スペイン・カナリア諸島 ラスパルマス-テネリフェ、モロ・ハブレ
カリブ海 フロリダ-バハマ

Photo Mark Markefelt. Image from DigitaltMuseum.ses collection
Cu Na Mara on the move for B&I Line. Photo Mark Markefelt. Image from DigitaltMuseum.ses collection (DigitaltMuseum), ca. 1980. This image is licensed under CC BY-SA 4.0.
B&I Lineに就航したジェットホイル「Cu Na Mara」1980年頃の写真
後に
佐渡汽船「ぎんが」として、現在も運航している。


佐渡汽船のジェットフォイル「ぎんが」 佐渡・両津港
佐渡汽船のジェットフォイル「ぎんが」 佐渡・両津港
Yamaguchi Yoshiaki from Japan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

現在、運航・係船しているボーイング929ジェットフォイル(Boeing 929 Jetfoil)

製造 形式 No. 引き渡し 船名 運航会社 運航期間 運行
ボーイング 929-100 10 1978年7月 コビーV  未来高速   係船中
929-115 11 1979年 トッピー7  種子屋久高速船   運航中
12 1979年2月 錫星(Terceira)  噴射飛航 1980年~ 運航中
13 1979年9月 天皇星(Funchal)  噴射飛航 1982年~ 運航中
15 1980年 ぎんが  佐渡汽船 1986年7月~ 運航中
16 1980年4月 海皇星(Horta)  噴射飛航 1982年~ 運航中
17 1980年10月 セブンアイランド愛  東海汽船 2002年~ 運航中
18 1981年2月 幸運星(Cacilhas)  噴射飛航 1991年~ 運航中
20 1981年6月 セブンアイランド夢  東海汽船 2002年~2014年
9月16日
係船中
21 1981年9月 帝后星(Taipa)  噴射飛航 1990年~ 運航中
23 1984年 ロケット2  種子屋久高速船   運航中
929-117 26 1985年 ヴィーナス2  九州郵船 2000年~ 運航中
川崎重工 929-117 1 1989年3月 つばさ  佐渡汽船 1989年4月~ 運航中
2   セブンアイランド友  東海汽船 2013年4月1日~ 運航中
3 1989年9月 ビートル3  JR九州高速船 2001年~ 運航中
4 1990年3月 ぺがさす  九州商船   運航中
5 1990年4月 ビートル1  JR九州高速船   運航中
6 1990年7月 ロケット3  種子屋久高速船   運航中
7 1990年10月 ぺがさす2  九州商船 1996年~ 運航中
8 1991年2月 ビートル2  JR九州高速船   運航中
9 1991年3月 ヴィーナス  九州郵船   運航中
10 1991年4月 すいせい  佐渡汽船 1991年4月~ 運航中
11 1991年6月 レインボージェット  隠岐汽船 2014年3月1日~ 運航中
12 1992年4月 トッピー2  種子屋久高速船   運航中
13 1995年3月 トッピー3  種子屋久高速船   運航中
14 1994年6月 セブンアイランド大漁  東海汽船   運航中
15 1994年6月 ロケット1  種子屋久高速船   運航中
16 2020年7月 セブンアイランド結  東海汽船 2020年7月13日~ 運航中
上海新南
船廠公司
PS-30-101 2 1995年 コビー  未来高速 2001年~ 係船中

ジェットフォイルの大半が日本にあることがわかる。

特殊な構造のため、建造には専用の生産設備と部品の供給が必要で、各種搭載機器、ウォータージェットシステムの供給メーカーの最小ロットが10基、すなわち5隻分となっているため、川崎重工業は建造を再開する場合、最低でも5隻程度の受注が必要としている。運航各社が単独でロットを満たすことは困難であるため、共同発注も検討されているが、船価の上昇と厳しい経営状況から実現していなかった。

しかし、2017年2017年(平成29年)になって、東海汽船が25年ぶりに川崎重工に新造船を発注した。これは、船齢36年を迎える東海汽船のジェットフォイル「セブンアイランド虹」の代替を考えたもので、数が集まらないと生産再開が難しいとされるウォータージェットシステムについては、就航船の修理用として確保していたものを流用した。
建造費用は、推進システムなどが従来と同等でありながら、51億円と25年前に比べてかなり高額になっているが、就航先の伊豆諸島は土砂災害や火山災害などのリスクを抱える地域であることから、ジェットフォイルが災害対応に有用と判断され、東京都から船価の45 %にあたる23億円の補助金が付いた。 
東海汽船では、この「虹」の代替でジェットフォイルの建造を終了するつもりはなく、さらに「セブンアイランド愛」などの後継船建造を進めたいという希望を持っており、佐渡汽船、JR九州、九州郵船、鹿児島商船など、今回の新造をきっかけにジェットフォイル運航各社が足並みをそろえられないかどうか、検討を求めている。
一方で川崎重工業も「当社は今後とも、国内の離島航路をはじめとする高速海上交通の維持・発展のため、ジェットフォイルの建造に積極的に取り組んでいきます。」との声明をホームページ上で発表している。通常の船舶は中国や韓国との価格競争が激しいため、国内で建造する船舶をジェットフォイルなどの付加価値の高い船にシフトする方針もある。

東海汽船ジェットフォイル セブンアイランド結
東海汽船ジェットフォイル  セブンアイランド結
金子颯汰, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ

東京と伊豆諸島などを結ぶ超高速旅客船「川崎ジェットフォイル」を受注
 プレスリリース | 川崎重工業株式会社

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20170630_1.html
東京と伊豆諸島などを結ぶ超高速旅客船「川崎ジェットフォイル」を受注
2017年06月30日
川崎重工は、東海汽船株式会社と独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構との共同発注により「川崎ジェットフォイル」1隻の造船契約を締結しました。本船は、神戸工場で建造し、2020年6月に引き渡した後、東京竹芝と伊豆諸島間を中心とした航路の旅客輸送に投入される予定です。
当社は1987年に米国ボーイング社からジェットフォイルの製造・販売の権利を引き継ぎ、1989年から1995年までに15隻のジェットフォイルを建造しました。本船は当社にとって25年ぶりの新造船となります。
ジェットフォイルは全没翼型水中翼旅客船と称され、高速性能と船酔いの無い快適な乗り心地を高いレベルで兼ね備えた超高速旅客船です。2基のガスタービンエンジンで駆動されるウォ―タージェット推進機から毎秒3トンの海水を噴射して前進し、前後2枚の水中翼に発生する揚力で海面から浮上することで、最高時速80km以上の超高速で航走します。また、波高3.5mの荒波でも安定した航走ができ、航空機と同じように船体を内側に傾斜させることでスムーズな旋回が可能です。
当社は、今後とも、国内の離島航路をはじめとする高速海上交通の維持・発展のため、ジェットフォイルの建造に積極的に取り組んでいきます。

「ジェットフォイル」建造レポート:~その特性と新造船「セブンアイランド結」の紹介~ | WORKING REPORT | JRTT PROJECTS | JRTT 鉄道・運輸機構
https://www.jrtt.go.jp/project/working-report/ship/no66/

全没翼型水中翼旅客船 ジェットフォイル | ANSWERS(アンサーズ) | つぎの社会に向かうKawasakiのこたえ | 川崎重工業
https://answers.khi.co.jp/ja/mobility/20200430j-01/

ジェットホイールに未来はあるのか

ある程度のまとめ売りをして、新造用の部品調達を容易に進めたい方向であるが、運航各社にその余裕があるか不透明である。1974年設計で、およそ50年が経過し、重量管理および推進性能の点から、主要目はほぼ完成規格であり、例えば、船体を長くしたい、主機関を小さくしたい等の仕様変更は不可能となっている点など、時代の変化に対応していけなくなっているのではないか、また、航行には少子高齢化やコロナ禍の観光需要減少に伴う需要低下、燃料費の高騰、などの問題もある。ジェットフォイルへのこだわりも各社によって異なるようで、高速船や高速フェリーへの置き換えで済ませる可能性もあり、実際にそうしている会社もある。ジェットフォイルから代替の船への入れ替えに失敗しているケースもあり、時間が経過しなければ評価は難しい。

JR九州高速船、新型高速船(クイーンビートル)発注

韓国・釜山との間にジェットフォイル・ビートルを運航している、JR九州高速船は2018年(平成30年)3月5日:ビートルの後継船となる新型高速船(クイーンビートル)について、オースタル社(オーストラリア)との間で三胴船の建造契約を締結した
クイーンビートル
2,300国際総トン、全長83.5m、幅20.2 m、航海速力36.5ノット。
旅客定員502名。オースタル建造。
当初2020年7月15日就航予定とされたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により航路が運休となったため就航日は未定。なお建造自体も遅れたが2020年9月29日に引渡しを行い10月15日に博多港に到着した。
当初はパナマ船籍だったが、日韓定期航路再開のめどが立たないことから、再開までの間国内遊覧運航について国土交通省から沿岸輸送特許を得て、2021年3月より沖ノ島遊覧コースに就航。しかしながら制約が大きいため2022年3月に日本籍に変更、4月から博多港 - 門司港、博多港 - 長崎港間航路の運航を開始した。

ビートル3隻売却検討 航路再開見通せず 新型船一本化し対馬寄港休止

2020/12/1 JR九州高速船(福岡市)は、新型コロナウイルスの影響で博多-韓国・釜山間の航路再開の見通しが立たないことから、保有するジェットフォイル「ビートル」3隻の売却を含め運航体制縮小を検討していることを明らかにした。再開後は新型高速船「クイーンビートル」1隻で運航。長崎県対馬市の比田勝港への寄港は無期限休止する方針。

佐渡汽船、2013年1月にウェーブピアサー社の新造の双胴型高速カーフェリーを導入決定

2015年4月21日より小木港と直江津港の間を1日2往復のダイヤで双胴型高速カーフェリー(ウェーブピアサー)の運航を開始した。所要時間は100分で従来のカーフェリーより60分短縮された。これまで、小木直江津航路に就航していた三代目こがね丸は、本船就航前日の20日の小木港17時発の便が最終運航となり、21日に直江津港から新潟港へ回航された。その後、売却整備を行った上で、リベリアのブラザー・スターズ・マリタイム社へ売却されている。
小木港と直江津港の間は1989年から冬期を除いて運航されてきたジェットフォイルは2003年10月末で運航を終了、カーフェリーも2008年4月のダイヤ改正でこさど丸が老朽化により引退し、以後はこがね丸1隻体制で1日1.5往復の変則ダイヤで運航が行われてきた。
新たに導入された「あかね 」は、双胴船の乗り心地の悪さや修繕費、新型コロナウイルスの流行による輸送低迷もあり、2020年10月に県、佐渡市、上越市と売却方針で合意し、わずか5年で佐渡を去ることとなった。後継にはジェットフォイルが使用される
高速性とジェットフォイルでは不可能なフェリーとしての運行が可能な長所を買われ、一回り小型のウェーブピアサーを新造する方針が決定された

カーフェリー売却し中古水翼船を購入へ 佐渡汽船:朝日新聞デジタル

https://www.asahi.com/articles/ASNBR72DLNBRUOHB00R.html
2020年10月24日
佐渡汽船が小木(佐渡市)―直江津(上越市)航路の高速カーフェリー「あかね」を売却し、ジェットフォイルを購入する計画を巡り、新潟県や佐渡市、上越市、同社が23日会談し、両津(佐渡市)―新潟(新潟市)航路のジェットフォイルを転用することで合意に至った。
当初は、あかねを売って中古のジェットフォイルを購入するなどして赤字が続く小木航路の収支改善を計画していた。しかし、同社はコロナ禍による乗客減少が長引くとみて新たなジェットフォイルは導入せず、両津航路のジェットフォイルを利用することで負担を減らす考えだ。ただ両津航路は2隻での運用となり繁忙期には欠航が増える可能性がある。

ジェットフォイル以外の水中翼船について詳しくは

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