「ほにゃらら遺産」、「なんとかかんとか遺産」
専門家がその専門分野で歴史的意義のあるものを保護、普及に役立てるために認定し、広く公表しているものが、多数ある。これらはユネスコの世界遺産とは関係ないが、専門的なその分野では価値のある物である。〇〇遺産、業界遺産ともいえるのではなかろうか。
価値のある物ではあるが、保存するにはコストもかかり、徐々に失われていっているようである。「ほにゃらら遺産」として選定することによって一般の関心を促し注目されることで保存へ向けて気運を醸成しようとするものであろう。
そのような、価値のある物をしらべてみた。
Shinkai 2000 is exhibited at Enoshima Aquarium, Kanagawa, Japan.
Miyuki Meinaka, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
「機械遺産」 日本機械学会 2007年~
「機械遺産」 日本機械学会 2007年~
歴史に残る機械技術関連遺産を大切に保存し、文化的遺産として次世代に伝えることを目的に、主として機械技術に関わる歴史的遺産「機械遺産」(Mechanical Engineering Heritage)について日本機械学会が認定している。2007年から毎年、認定されている。2007年度に認定されたものは下記。
https://www.jsme.or.jp/kikaiisan/#section1
「建築設備技術遺産」 建築設備技術者協会 2012年度~
建築設備部門の技術および設備関連情報とそれらを建物に収めてきた技術を次世代に伝えるとともに、建築設備の「技術」、「役割」「文化」を多くの人々に広めていく目的で、「建築設備技術遺産」認定制度がはじめられた。
建築設備における空調、衛生、電気、搬送の4領域に関する技術と技術者の歴史的な足跡を示す事物・資料であり、建築設備技術の進歩、発展において重要な成果を示したもの、また、生活、経済、社会、地球環境、技術教育に貢献した、または当時を反映する建築設備技術を認定している。
2012年度から毎年、認定されている。2012年度に認定されたものは下記。
建築設備技術遺産 – 一般社団法人 建築設備技術者協会
https://www.jabmee.or.jp/about-heritage/
「日本天文遺産」 日本天文学会 2018年度~
日本における天文学(暦学も含む)的な視点で歴史的意義のある史跡・事物を日本天文遺産として日本天文学会が認定するもので、対象は3つのカテゴリーを含む。
- 史跡・建造物で、天文学上、重要であった地点や建築・構造物,観測施設など。
- 物品で、天文学上の重要な発見に関与する物品や天文学における歴史的意義が高い物品。観測機器や天文学研究に用いられた測定装置など。
- 文献で、歴史的意義のある天文学関連の文書類など。
日本天文学会 認定について - 公益社団法人 日本天文学会
https://www.asj.or.jp/jp/activities/designation/
「産業遺産学会推薦産業遺産」 産業遺産学会 1985年度~
産業遺産の多くが、文化財保護法などによる有効・安定な保存措置を受けていない現状を考慮し、「保存を必要とする重要な産業遺産のうち、国あるいは地方自治体による文化財指定を受けていないもの」について、産業遺産学会が独自に選定・推薦を行って発表し、それによって世論や関係諸機関の関心を呼び起こし、産業遺産の保存推進に役立てることを目的に選定されている。この推薦産業遺産は、産業遺産学会が選定・発表するだけで(遺産の所有者・管理者から要望がある場合は認定証及び銘鈑(有償)を発行する)、法的な保障もなく、また拘束力もない。しかし、とかく無視されがちな産業遺産に正しい評価を与えて世間に注目させ、また所有者をはじめ関係者に、その重要性をあらためて認識していただくことを目的としている。この方針に基づき、全国の会員から寄せられる「推薦候補」の産業遺産について学会が審査し、毎年の総会で発表している。
https://sangyo-isan.net/suisen/suisenisan/isan-ichiran
- 1 石井閘門 宮城県石巻市水押 建設省北上川下流工事事務所
- 2 足利模範撚糸合資会社建物 栃木県足利市 アンタレス・スポ-ツクラブ
- 3 碓氷アプト線遺跡 群馬県松井田町(信越線横川-軽井沢間) 松井田町
- 4 日立鉱山煙突 茨城県日立市宮田町大雄院 日鉱金属日立工場
- 5 旧板橋火薬製造所の圧磨機 東京都板橋区 板橋区教育委員会
産業遺産学会推薦産業遺産 | 産業遺産学会
https://sangyo-isan.net/suisen/suisenisan
「保全遺産」(Maintenance Heritage)日本保全学会 2019年度~
2019年度より、保全学の発展、普及、社会への貢献を奨励することを目的とし、歴史に残る保全技術関連遺産でありかつ人類の文化的遺産である保全遺産(Maintenance Heritage)を認定する制度を設けている。認定候補の代表者は個人または団体とし、原則として会員を認定するもので、保全遺産の内容としては以下の種類を設けており、認定件数は毎年1~2件とする。
画期的な保全措置が取られたことを示す機器、プラント、システム
画期的な保全の技術資料(文献もしくは残された資料)
歴史的な保全措置や技術を示す建造物、構造物、展示館等の所蔵品などの事物
https://www.jsm.or.jp/about/heritage.html
「化学遺産」 日本化学会 2010年~
- 化学関連の研究・技 術等で大きな功績を残された高名な化学関係諸先達にインタビューを行い、それを映像と音声及び冊子体で後世に残す事業[化学語り部:オーラルヒストリー 事業]
- 会員及び一般市民を対象とする化学・化学技術史に関する普及・啓 発事業の実施[化学遺産市民公開講座・化学史料展示会の開催]
- 平成22度から、世界に誇る我が国の化学関連の文化遺産を認定 し、それらの情報を社会に向けて発信する「化学遺産認定事業」を開始
https://www.chemistry.or.jp/know/heritage/
「土木学会選奨土木遺産」 土木学会 2000年~
土木学会は、土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的として、土木学会選奨土木遺産の認定制度を平成12年に設立した。
結果として、
- 社会へのアピール(土木遺産の文化的価値の評価、社会への理解等)、
- 土木技術者へのアピール(先輩技術者の仕事への敬意、将来の文化財創出への認識と責任の自覚等の喚起)
- まちづくりへの活用(土木遺産は、地域の自然や歴史・文化を中心とした地域資産の核となるものであるとの認識の喚起)
- 失われるおそれのある土木遺産の救済 (貴重な土木遺産の保護)
https://committees.jsce.or.jp/heritage/
「ばね技術遺産」 日本ばね学会 2013年~
日本ばね学会では学術的諸活動に加えて、ばね技術遺産の保護、顕彰を担うことも課せられた使命と考えており、寄せられた情報をもとに調査し、認定基準に照らして認定の可否を判定し、認定された場合には、定例講演会において認定証と表彰状を授与する活動を行っている。 また、認定されたばね技術遺産の保護についても、事情の許す限り取組まれている。2013年に認定されたものを下記にまとめた。
認定機器類及びばね
認定文献
日本ばね学会 - ばね技術遺産
http://www.jsse-web.jp/heritage.php
「林業遺産」 日本森林学会 2013年度~
日本各地の林業は、地域の森林をめぐる人間の営みの中で編み出され、明治期以降は海外の思想・技術も取り入れつつ、大戦期の混乱を経て今日に至るまで、多様な発展を遂げてきた。日本森林学会では、学会100周年を契機として、こうした日本各地の林業発展の歴史を、将来にわたって記憶・記録していくための試みとして、「林業遺産」選定事業を2013年度から開始した。各年度ごとに、林業発展の歴史を示す景観、施設、跡地等、土地に結びついたものを中心に、体系的な技術、特徴的な道具類、古文書等の資料群を、林業遺産として認定してる。2013年度に認定されたものは下記。
林業遺産 一般社団法人日本森林学会
https://www.forestry.jp/efforts/forestryheritage/
「複写機遺産」 日本画像学会 2018年度~
C.F.カールソンの複写機の発明から80年を迎える2018年、日本画像学会は、創立60周年を記念し、「複写機遺産」を認定する事業を開始した。毎年、認定を続けている。2018年度に認定されたものは下記。
https://www.imaging-society-japan.org/others/heritage/Copying_Machine_Heritage_2018e.pdf
- 【複写機遺産第1号】リコー リコピー101 複写の代名詞「リコピー」の起源となった卓上複写機 製造年:1955年
- 【複写機遺産第2号】富士ゼロックス 914 国内で製造された初めての乾式電子写真方式の事務用複写機 製造年:1962年
- 【複写機遺産第3号】キヤノン NP-1100 ゼロックス社の特許網を破った独自技術による普通紙複写機 製造年:1970年
- 【複写機遺産第4号】コニカ U-Bix 480 国産技術による最初の間接乾式電子写真複写機 製造年:1971年
日本画像学会:複写機遺産
https://www.imaging-society-japan.org/others/heritage.html
「情報処理技術遺産」 情報処理学会 2008年度~
我が国のコンピュータ発展史上の重要な研究開発成果や製品などが多数存在するが、その大半はすでに廃棄されて、実物が存在しな物も多い。しかも、現存しているものも、日に日に失われていっており、これらを収容・展示できるような博物館の実現を目指しているが、現在のところ見通しは暗いというのが実情。そのような厳しい現実の中で、現存している貴重な実物の保存努力に敬意を表し、今後の保存継続をお願いするために、情報処理学会では情報処理技術遺産認定制度をスタートし、貴重な資料の存在が広く社会に知られ、関心が高まることを期待して、毎年認定が続けられている。
2008年度(平成20年度)に認定されたものされたものは下記。
http://museum.ipsj.or.jp/heritage/
「ふね遺産」 日本船舶海洋工学会 2017年~
歴史的で学術的・技術的に価値のある船舟類およびその関連設備を「ふね遺産」(Ship Heritage)として認定し、社会に周知し、文化的遺産として次世代に伝えるとともに、「ふね遺産」を通じて、国民の「ふね」についての関心・誇り・憧憬を醸成し、歴史的・文化的価値のあるものを大切に保存しようとする気運を高め、我が国における今後の船舶海洋技術の幅広い裾野を形成することを目的としている。2017年に選ばれたものが下記。
https://www.jasnaoe.or.jp/enlightenment/funeisan/01.html
- 〈現存船〉 日本丸 ~機関搭載浮揚状態で現存する最古の日本建造練習帆船~ 横浜市(帆船日本丸記念財団管理)
- 〈現存船〉 ガリンコ号1~スクリュープロペラの原型である螺旋スクリュー推進流氷海域遊覧船~ 紋別市
- 〈復元船〉 復元菱垣廻船「浪華丸」~江戸時代の海運で活躍した菱垣廻船の唯一忠実な実物大復元船~ 大阪市
- 〈船舶に搭載された機器、設備〉 金華山丸のブリッジ設置機関制御コンソール~機関自動化の先駆け金華山丸のブリッジ設置制御コンソール~ (株)商船三井
- (技術部技術研究所管理)〈船舶の建造設備〉 旧浦賀船渠(株)のドック~明治期(1899年)のユニークな煉瓦積ドック~ 住友重機械工業(株)
- 〈船舶の建造設備〉 下関旧第四港湾建設局船渠~我が国残存の最古級(1912年)コンクリート製ドック~ 下関市
- 〈船舶の研究関連設備、機器〉 東京大学船型試験水槽~我が国最古(1937年竣工)の大学船型試験水槽~ 東京大学
- 〈船舶の研究関連設備、機器〉 船舶搭載型航海性能計測コンテナ~世界に先駆けたオール・イン・ワン型実船計測システム~ 横浜国立大学(海洋空間のシステムデザイン教室管理)
- 〈造船関連資料〉 平賀譲文書~明治・大正・昭和に亘る40000点に及ぶ造船技術資料~ 東京大学
https://www.jasnaoe.or.jp/enlightenment/?id=funeisan
「未来技術遺産」(重要科学技術史資料) 国立科学博物館 2008年度~
「未来技術遺産」とは、歴史的に重要な産業技術の資料を調査して、保存と活用を図る「重要科学技術史資料」事業の愛称である。同事業は国立科学博物館が行っており、「日本の技術遺産を未来に継承していこう」という思いが込められている。「科学技術の発達史上の重要さ」だけではなく、「生活、社会、文化への影響」も重視して選定されている。2008年に選ばれたものが下記。
Center of the History of Japanese Industrial Technology
https://sts.kahaku.go.jp/material/index.html
「歴史的電力遺産」 中国電力 2011年
建造物として登録有形文化財など公的機関から指定・選奨されているもの、また、規模・性能・実績・導入時期等が世界一(初)・日本一(初)など、特徴的なものが数多くあります。中国電力の歴史を象徴するとともに、地域の電力の安定供給に貢献してきた建造物や機器類を歴史的電力遺産として整理された。中国電力が選定整理しているため中国地方のみ。
近代の産業遺産を未来につなぐ歴史的電力遺産|中国電力
https://www.energia.co.jp/isan/
「でんきの礎」 電気学会 2008年~
2008年(平成20年)、電気学会創立120周年記念事業の一環として、「顕彰委員会」および「顕彰選考小委員会」を設置し、電気技術の顕彰制度『でんきの礎』の運用を開始した。毎年認定を続けている。2008年に、認定されたものが下記。
「IEEEマイルストーン」(アイトリプルイー マイルストーン IEEE Milestones)
米国電気電子学会(IEEE)1983年~
電気・電子・情報技術やその関連分野の歴史的偉業に対して行う顕彰活動の一つである。認定要件として25年以上に渡って世の中で高く評価を受けてきたという実績が必要である。1983年から制定され始めた。米国内に留まらず世界の功績を認定している。日本の企業、団体が関連したものは下記の通り。
IEEE Milestone受賞一覧 - IEEE 日本カウンシル
https://ieee-jp.org/activity/jchc/milestone_jusho.html
Milestones:List of IEEE Milestones - ETHW
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